叶わぬことなどない。
 それは叶わぬと諦める陳腐な精神だからそうなるのだ。

 俺はそう思う。


「いざく、お願いあるの」
 ああ、可愛いぞ。ちくしょう。
「あした、時間ある?」
「あるぞ」
 イザークは絶品の笑顔で、ステラに答えた。返事を聞き、ややしてステラの浮かべた照れたような微笑がまたイザークを苦しめる。
 ああ、可愛いぞ。こんちくしょう。
「どうして、よりにもよってシン・アスカなんだ・・・・・・」
 つい漏れた愚痴にステラは首を傾げてこちらを見上げてきた。その愛くるしい瞳にイザークは再び意味不明にテンションが上がった。
「よおし、明日は議会はなしだ!俺は明日、公休だ!」
「ほんと?いざく、明日いちにちお休み?」
「そうだ!ステラ、時間なら24時間たっぷりあるぞ!」
 フェブラリウスはこんな代表様で、とっても大変である。

 

 

 

「イザークの好きなもの、ですか?」
「う。なに、すき?」
「そうですねえ」
 ラクスは口元に指を当てて、少し考える間を置く。
 検査を終えたステラはまだ白い検査着のままで、そこにいた。腕に出来た注射の痣や首と額にできた麻酔の痕が痛々しく、ラクスはいつもこう
して会いに来たときにはステラを何度も撫でてしまう。
 されるがままになって、嬉しそうに微笑むステラは子猫染みていて慰めたいはずが癒されるのはこちらになってしまうのが常だ。
「ステラ、ですわ」
「ステラ?それはあげれないから・・・・・・なにか、ほかにない?」
「ですわねえ、ステラはシンのものですものね」
「う!」
 きっと、イザークの誕生日を祝うために聞いているのだとラクスは内心微笑む。物などあげずとも、デートでもしてやれば死ぬほど喜ぶと思うの
だが、明日は休日だが確か臨時議会があったはずなのだ。
「イザークは勝負事がすきですわよ、ステラ」
「勝負?」
「いいこと思いつきましたわ」
「?」
「ステラはスポーツはお得意ですか?」
「うごくの、すき。でも、へたっぴ」
 ラクスは頷いて微笑むと、携帯を取り出して早速手配をかけた。
「あ、ディアッカですか?明日はお時間あります?ええ、ええ・・・・・・」
 話しながらステラにVサインを投げてやると、ステラは不思議そうにしていたが笑って同じように指をVサインにした。
「馬の手配はディアッカにお願いしましたわ。さあ、ステラ。明日の外出許可をダット所長にもらいに行きましょう」
「?」
 よくわからないままのステラの背をラクスは押しながら、脱衣室を出た。

 

 

 

 

 

 

 スカイブルーの雲ひとつない空の下、若い目の芝生が一面に広がる平野を見渡して、ステラは感動しているようだった。
 イザークは前に乗せてやっている少女が声もなく感動している様についつい頬を緩めながら、手綱をゆったりと引く。毛並みのいい白の馬はイザークの
お気に入りだった。この牧場にくれば必ず会いに行き、こうして乗せてもらう。
 美しい牝馬だった。ささやかに引かれた優しい手綱に馬は静かに反応すると、蹄を鳴らしてゆったりと歩き出す。
「わ、う、え」
「そのうち慣れるぞ」
「うご、うごいてる、る」
 馬の背に伝わる動きにステラは驚きながらも、少しばかりすればその調子に合わせることを覚え、ゆったりと歩む馬の足並みに自然と身を任せていた。
「うむ。ステラは良い騎手になれる素質がある」
「きしゅ?」
「そうだ。馬の乗り手のことだ。MSも同じ、馬のように気品ある気高い乗り手でないといかん」
「ステラもガイア、のれるよ」
「そうだな。でも、これからはこいつに乗るといい」
 金の絹のように棚引くステラの髪を手のひらで梳いてやると、ステラは微笑んで振り返った。あまりにも綺麗なその笑顔にイザークは言葉をなくす。
「この子、イザークみたいに綺麗だね」
 白い馬は太陽の陽を浴びると銀に見えた。
「それは光栄だ。ま、ヴェアトリスは女性だがな」
 苦笑して言ってやると、ステラはしげしげと馬の顔を乗り出して眺めた。なびく髪が鬣と混じって、とても優雅だった。
「ステラー!!」
 背後から蹄が駆ける音と共に涼しげなラクスの声が聞こえてきた。イザークは思わず舌打ちする。
「ラクス嬢め」
 漆黒の馬を駆りながら、ラクスはあっという間にイザークたちの隣まで追いついた。
「どうです?ステラ乗馬は気に入りましたか」
「うん!とっても、楽しい!」
「あらあら、ヴェアトリスもご機嫌ですわね」
 ステラが首を撫でると、ヴェアトリスは微かに答えるように上品に声をあげた。
「この子、イザークしか乗せませんのよ」
「気位が高い女なのさ」
「イザークの好みが知れますわねえ」
「おい、ラクス嬢。邪魔しにきたなら帰ってくれ」
「あら、偶然にも議会がお休みになって、偶然にもジュール家公用牧場が開放日だとお聞きして、偶然にもイザークにお会いしたまでですわ。誰が邪魔
など」
「ちいぃっこれだから嫌なんだ、女というものに口では勝てんっ」
「女でなくとも勝てないではありませんか」
「・・・・・・」
「アスラン?」
「・・・・・・その名を休日に聞きたくない!やっぱり、邪魔しにきたのだな?」
「とんでもない」
 馬上で激しいにらみ合いをする二人をステラは振り返って不思議そうに眺めていたが、やがてぽつりと呟いた。
「しょうぶ、する?」
 にっこり笑ったステラは楽しそうにそう言った。
「それは良い考えですわね」
「おい、待て。まだステラを乗せてヴェアトリスを走らせていないんだぞ。大体、二人乗りで競争は危ない」
「わたくしにハンデを下さってもいいではありませんか」
「ステラを危険な目にあわせられない」
「イザーク・ジュールという男の右に出るものは」
「皆無だ!」
「では、やりましょう」
「ぐ」
「ね。ステラ」
 桜色の髪を風にはためかせ、ラクスは極上の微笑みでステラを覗き込む。イザークはこの姫様には一生勝てない気がしながら、苦虫を噛み潰す。
「する!しょうぶ!いざく、しょうぶ、すき!!」
 元気良く言ったステラに合わせるようにヴェアトリスも鳴き声を上げた。
「ほうら、ヴェアも今日はテンションが高いようですわ」
「・・・・・・知らんぞ」
 呟く声が低くなる一方だが、イザークはステラの笑顔に諦めて嘆息した。珍しくヴェアトリスが騒がしいのに不機嫌ではないし、天気もいいし、ど
うやらイザーク自身とても気分が高揚している。
 つまりは、
「勝負だ!ラクス・クライン!!」
 こうなるのである。

 

 

 

 


「で?」
「ちょっと、そんな顔しなくてよくない?」
 へらっと笑って見せたディアッカにイザークは不機嫌いっぱいの顔で睨む。
「しかも・・・・・・どうして、こいつがここにいる!!」
「いるーっ」
 勢い良く隣を指差して、イザークは吼える。一緒にのっているステラは楽しそうに一緒になって叫んだ。
「勝負事にアスランがいないと、お前燃えないっつってたじゃん」
「いつの話だ、いつの!」
「えー・・・・・・、戦時中?」
「もっと違うことを覚えておけーっ」
「ふ、ふ、いざく、元気」
「ステラ・・・・・・」
 くすくす笑うステラを困った顔で見てイザークは情けなくも、アスランを睨むのはやめない。
「偶然、きたらお前がいたんだ。不可抗力ってヤツさ」
「どいつもこいつも、偶然偶然って言いやがって・・・・・・」
 涼しげなアスランの台詞にぎりぎりと口唇を噛みながら、イザークは手綱を握り締める。
 牧場の麓に並んだ馬は四頭。美しい馬たちが優雅に寛ぐのとは対照的に馬上ではこうして、賑やかな言い合いが繰り返されているわけである。なんとも
牧場の昼下がりに似合わぬ男性陣と違って、ラクスと漆黒のアルテミス号は貴族のように構えている。
「早く走りましょう」
 なんて、超余裕である。
「どうなっても知らんからな!」
「息巻いてるじゃん、イザーク」
「滅びろ、ディアッカ」
「ひでえなあ」
 ぽりぽりと頬をかくディアッカをさらに睨みつつ、イザークはその向こうにいるラクスを見た。のほほんと構えているがあの女が一番狙っているはずな
のだ。どんな手を使ってでも勝ちにくる。それがラクス・クラインだ。
 イザークが画策する間、ステラはおとなしくヴェアトリスに跨ってその毛並みを撫でてやっている。ほんの束の間イザークは癒されながら顔を振った。
「勝つぞ。ステラ」
「お!」
「勝負は勝つためにある」
「う!」
「俺たちは無敵だ!」
 気合を入れたところでちらりと反対側にいるアスランを見やると、手綱を握る手が僅かに震えている。
 ざまあみろ。悔しがるがいい。
「勝利の女神、ここにあり。だな」
「イザーク、ステラに怪我させたら許さないからな」
「そんなことありえん」
 くそ真面目な顔でアスランが言うのをいなして、イザークはいよいよ姿勢を正した。
「ではルールは、あの先に見える丘を迂回してここへ戻るということ」
 笑顔でラクスは告げながら、丘の方向を指差す。
「丘には、旗があります。それを取ってここへ戻った人の勝ちということで」
「これは結構、やばそうだな」
「なにがだ?ディアッカ」
「え?だって・・・・・・この面子じゃん?競り合ったらフェブラリウス壊れるんでない?」
 確かに。
「旗を取って戻ればいいんだな」
「あら、アスランったら勝つ気ですわね」
「当たり前だ」
「是非、頑張って下さい。なにせ、旗を持って帰った勝利者はステラからプレゼントがありますわ」
『なに!?』
 ディアッカ以外の男は食いつくように声を上げた。
「ね、ステラ」
「いざくに用意したの、きょう、いざく、た」
「俺が絶対勝つからな、ステラ」
「あ、アスラン」
「おい、待て。今ステラ、俺のためにって言わなかったか?」
「では、スタートしましょう!」
 爽やかに言うのはラクスである。イザークはまたしてもぎりぎりと歯噛みしたが、なんとか深呼吸して口の端を持ち上げた。
「・・・・・・まあいい、勝つのは俺様だ」
 この時はまだ、爽やかな風がイザークを祝福するように流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるでそれは一陣の風のようだった。
 
 片手で手綱を握ったまま、まるで舞うように、飛んでいるようにも見えた。


 そっとまるで花でも摘むみたいに、ステラはその旗を誰より早く手に取った。

 

「ステラーっ」
 もみ合うように駆けるアスランとラクスよりも馬一つ分先をゆくイザークとステラのヴェアトリスに背後から嘆きの声が聞こえてくる。それでも勢いは
変わらず、まっしぐらに牧場のスタート地点へ向かっていた。
「やっぱりダークホースはステラでしたわね」
「むむむ」
 並んで駆けながら、ラクスは微笑み、アスランは唸り続ける。
「今日ぐらい、あいつに勝たせてやろうぜ?アスラン」
 暢気に馬を走らせながら追いついたディアッカが言う。しかし、アスランはその言葉を鼻で笑い飛ばして吐き出す。
「断る。勝負は勝負さ」
「っとに、お前らいつもこうなんだから・・・・・・」
「待てえ!イザーク!!」
 その距離を一気に詰めようとしたアスランの行く手を阻むのはラクスだ。
「わたくし、負けず嫌いですの」
 知ってる。
 アスランもディアッカも、同時にそう思った。
「二位はステラのほっぺにちゅうですわー!」
「なんだってえええ」
 血相を変えるのは、やっぱりアスランだけであった。

 

 

 

 


「ラクス、おめでと」
「はい」
 ステラから頬にキスをもらい、ラクスは満面の笑みで満足そうにステラを抱きしめた。
「・・・・・・なあ、これってやる意味なかったことないか?」
「確かに。ま、いいじゃないか。ラクス様もたまには遊びたかったんだろ」
 たまにか?たまに遊んでいるか?この人は。
 アスランのじと目も気にせず、ラクスは幸せそうにステラを満喫していた。
(キラはどうした、キラは)
「キラも明日、こっちにくるのですわ」
「心を読まないで下さい」
「だって。アスランが心配してくださってたものですから」
 心配ではない。嫌味だ。
「そういえば、イザークはどうした?あんなに張り切って、しかも一位獲れたのに」
 アスランは馬屋に戻っているヴェアトリスを見やって、姿のないイザークを探すが見当たらない。あのどこでも主役になりたがる奴がいないというの
は珍しい。勝ったというのに。
「大方、勝ったのはステラであって、俺様じゃなーいっとか言ってどっかでしょげてんだろ」
 笑うディアッカの的確な表現に、アスランは納得して頷いた。
「ステラ、イザークに渡したいものがあるんだろう?」
「うん。今日、いざく、誕生日」
「そうだな。じゃあ、きっと裏の庭にいるはずだから行ってあげてくれるか?」
「いく」
 頷いて、微笑むとステラは手を振って自分の鞄から包みを取り出し出て行った。
 見送る小さな背中にどうしても親鳥の気分になったが、アスランは目を伏せて自分に苦笑した。
「・・・・・・ま、今日ぐらいは譲ってやるさ」
 隣で可笑しそうに笑うラクスが気に入らないが、アスランは大人な自分をほめてやることにした。

 

 

 

 

 

 

 


 庭に咲くトルコキキョウの美しさは昔から変わらない。
 イザークは眺めながら、白しか咲かないこの庭の桔梗に目を細めた。

 アスランと勝負したのはいつぶりだろう。
 いくつも挑んで悔しがったものだった。あの頃はまだ囲む仲間も多く、散ったものたちが生きていた時間だ。思い描けば胸には苦い思いと懐かしい
想いが去来して、複雑な気分になる。
 イザークは、アスランやディアッカと違って感傷に浸る主義ではないと、思っている。
 そういうのは、そうできる奴がすればいい。
 塞ぎこむのは性に合わない。向かっていくしかイザークにはなかった。いつでも。

 とても固執しているようで、そうでない。そんな自分が嫌になる日もあった。
 戦争があってのイザーク・ジュールだった日々。それは「もしも」の存在しない、自分だ。

「もう22になるぞ、イザーク」
 落ち行く夕陽に胸は詰るように苦しい。
「なんだ・・・・・・俺も、やきがまわったな」
 ニコル、ミゲル、ラスティ、この時期はいいな。
 精霊は迎え火を目印に還ってくるというではないか。この宇宙は広いから、焚いてやるよ。なあ、ちゃんと送り火もしてやる。安心しろ。
「いざく」
「ステラか」
 振り返ると、金の髪を夕日に染めたステラが立っていた。佇む姿は儚く、これが現実なのか幻覚なのかと迷わす光景だった。薄ら香る桔梗の香りにイ
ザークは目を細めた。
「いざく、これあげる」
 ステラは開いた小さな手のひらに何かを乗せていた。
「これは?」
 歩み寄って、そっとそれを手に取って見ると、小さな貝殻に紐に通したネックレスだった。白い貝殻は透かして見ると七色に変化した。
「あげる。ステラ、オーブの海でみつけたの。お守り」
「お守り……」
「ステラね、なんにも覚えてない。でも、これもってたの」
 ステラは自分の懐からそっと同じように紐に通してある貝殻のネックレスを出して、イザークに見せた。大事そうに握りしめたそれがステラにとって
どれほど大切なものかよくわかる。
 自分のことを覚えていないという恐怖。
 名前は覚えているのに、持っていた持ち物の意味がわからない。
 こころの中にもう一人の知らない自分がいて、その自分は過去に犯した罪のことを知っている。
 
 ステラの背負う様々な思いと境遇に、その体の傷跡が重なってイザークは苦しくなる。

 おかしなものだ。
 敵だったステラ。無垢で、与えられた道しか歩めず記憶を奪われ続けた哀れな少女。その純粋さゆえに多くの命を奪ったこと。すべて知っているのに。

「これはね。死んだときも持っていたの。ステラ、思いだすまで、がんばるの」
「……そうか」
「きっと、ステラ、もらったとき幸せだったと思う。だから、いざくにもしたかったの」
 優しいステラの手が、イザークの手をとらえて動く。
「いざくがずっと、げんきでいますように。いざくのお誕生日をずっと祝えますように」
 包み込むように握りこんで、ステラは願うように言う。
 柔らかい声、握りこんだ手の中の貝殻がこれは夢ではないと教えてくれた。
「うまく歌えないけど」
 そう言って、揺れる桔梗の風景でステラはたどたどしいハッピーバースディを歌う。
 紡がれた優しい歌は、作りだされた風にのってどこまでも、地上までも、届いてしまいそうだった。

 今はここだけでいい。


 聞こえたら、あの寝癖バカが来てしまう。
 言外にそう呟いて、イザークは目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 


「隊長、歳の上乗せ完了、おめでとうございます」
「ハーネンフース、嫌味なら後にしてくれ」
 イザークは評議会の準備のため書類に次から次へと印鑑を押している最中だった。それをいとも楽しそうに背後から眺め、手伝うわけでもなく声をかけ
てきたのはシホ・ハーネンフースである。
 気に入っているのか、きっちりと着こなした赤服は相変わらず良く似合っている。しかし、その涼しげな態度がどうにも今のイザークには気に入らなかっ
たが。
「いったい、このクソ忙しい時に何の用だ?お前、プラント本国に戻って開発の方に回ってるんじゃなかったか?」
「はい。先日までそのように」
「……なぜ、ここにいる?」
「隊長に久々にMSの試運などいかがかと思って」
 イザークはシホの飄々とした態度に肩を竦め、判をつく手を速めた。
「……変わりませんね」
「変われんさ」
 返事に笑うシホを見てイザークは瞬くが、遅れて訪れた自然な苦笑で互いに笑い合う。生き延びてこうして笑い合える仲間がいることは本当にいい。
「議会が終わりましたらご連絡ください。詳細はその時に」
「わかった」
 頷いて作業に戻ろうとしたイザークの方をシホが振り返ってのぞきこんだ。
「……隊長、それ」
 目にとめたのはステラのくれたお守りにだった。
「ああ、これか」
 イザークはテーブルに置いた母の遺影にかけていた貝殻のネックレスと見つめて答える。
「ステラが誕生日にくれたものだ。身につけるより、ここの方が効果がありそうだろう?」
「なるほど」
 シホは短く返事すると、身を翻して出口へと向かう。
「また、あとでな。ハーネンフース」
「はい」
 どうしてか冷たく感じるシホの背に、イザークは首を傾げながら見送った。


「渡せなかったじゃない……」
 無表情に近いまま、シホはポケットから小さな包みを取り出す。手の中で持て余しながら、短く嘆息して諦めたように伸びをした。
「あの隊長が、ステラ……か」
 きっちり揃った前髪を少し混ぜるようにしてシホは歩き出した。

 

 


 イザークの恋のお話は、そのうちに。

 

 

 

 

 


どうにもこうにも。

とにもかくにも、イザークおめでとう!!!

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