コズミック・イラ73年10月2日。


 ステラは、待機を命じられたプラントの軍事工廠「アーモリーワン」のあるホテルの一室にいた。
 ぼうっとただ、目の前にある窓ガラスから見える工業用都市の風景を眺めていた。何のことはない、感慨などない。来たことも
ないコロニーに思い出もなければ、期待もない。
 
 作戦は簡潔。
 ザフト軍の次世代型試作MS群「セカンドステージシリーズ」の強奪である。

 ステラの所属する地球連合軍第81独立機動群“ファントムペイン”での初作戦だった。
 漸く下った命令である。ずっとロドニア研究所で戦闘訓練を受け、任務遂行のための試行ミッションも何度も受けてきたステラ
にとって待ちに待った機会であった。
 外に出れる。
 研究所以外の場所へ。あの絵本の中に見た青色をした「海」というものがある場所へ。

 嬉しくて、それを聞いた日は眠れなかった。
 でも、それは誰にも秘密。ステラは無表情のまま、じっとその日を待つことにした。

「あれが……」
 少し遠くに見える市街向こうの青いもの。
 それは人工海である。
 ステラにそれが人工のものであるなどはわからなかったし、どうでも良かった。とにかく早くあそこへ行きたいと思った。
「うみ」
 窓ガラスに映る海に指を這わせて、ステラはゆっくりと目を細めた。
 同時に映りこんだ自分の姿にピントを戻す。

 ネオから貰ったこの服。
 
 ふんわりした青と白の布、合わせ結んだ鮮やかなワンピースは、初めて見たとき着方さえわからなかった。それでも生まれて
初めて誰かから何かを貰うという出来事に胸は躍り、知らない感情が溢れた。
 ただ、ステラにはそんな時どうすればいいのかを知らなかったし、どうそれを表現すればいいのかもわからない。
 受け取った紙袋を開けて、放心状態でいたステラに隣で同じように受け取ったアウルが鼻で笑い、からかったのを思い出す。

「ふふ……」
 静かに足を動かして一回りすると、ステラは先ほどと同じように目を細めた。
 花のように広がって落ちるスカートは優しくて、柔らかい感じがする。ステラはなんだか自分が読んだ絵本の中のお姫様に
なった気がして、そっと息を吐いた。
「おい。ステラ!行くぞ」
 ノックもなしに思い切り開かれた背後のドアに、ステラは振り返る。
 不機嫌そうなアウルがぶっきらぼうにそう叫んだ。
「実行?」
「ああ。それしかねえだろ!足、引っ張んなよ」
 アウルは眼光を鋭くしてこちらを睨むと、あけっぱなしのドアの向こうにさっさと歩いて行ってしまう。
「……たたかう。ステラ、こわいものなくすために」
 もう一度、振り返ってステラは市街を見つめた。
 
 多くの人が行きかう街道。
 「生活」というものを営む人々。
 ステラにはそれは暗雲のように見えた。

 お前はここにはいれないのだと囁く、暗雲に。

 

 

 

「シン!」
 ヨウランの声に反応して、シンは顔をあげた。
「俺、ちょっとこの先の店行ってるから待っててな」
「あ、おい、もう戻らな……ったく」
 声をかけた時にはもう同僚も背は遥か彼方である。
 彼の大好きなラクス・クラインのグッズでも見に行ったのか……シンはひとつ溜息をつくと、前髪に手櫛を入れて路地に佇んだ。
 目の前を流れるアーモリーワンの風景にシンは、知らず遠い目になった。
(平和……か)
 訓練を受け、優秀な成績を修めたシンはもうアカデミーを卒業し、立派に赤服として本日の新造艦ミネルバの進宙式の為にここへ
やってきていた。
 心に呟いた言葉に、シンは目を伏せる。
 シン自身、何の為に戦うのか、何を懸け何を守るために戦うのか、それをいつでも身につけた携帯に託していた。それでも、本当
は「何の為」と問う気持ちがどこかで己を責めるようで、シンは目を逸らすことに必死だった。
「笑うよな」
 思わず漏れる言葉にシンは苦笑した。
 そうだ。自分は決心し、立ち上がり、ここまできたのだ。
 理念を守り、民は守らぬ国の持つ「信念」とやらに復讐するために。居場所という居場所を奪い去った戦争に決着をつける為に。
「……これから進宙式だっていうのに、何考えてるんだ。しっかりしろ」
 シンは顔を振って、息を吐いた。
「ヨウランの奴、遅いなあ」
 これから式が始まるというのに。
 シンはもたれていた壁から身を乗り出して、ヨウランの行った先を覗こうと乗り出した。
「……っわっと」
「きゃ」
 衝撃があって、シンは瞬く。
 短い悲鳴があった為、誰かにぶつかったことがわかった。
「……っ」
 傾いだ相手の体をシンは思わず腕を出して支え、反転して相手の背を抱えるようにした。
「だれ?」
 シンは倒さずに済んだことに安堵し、肩の力を抜く。聞こえてきた声に、シンは目を伏せて嘆息した。
「あ……」
 呟いた相手はゆっくりと振り返った。
「……」
 息を呑む。 
 赤紫の瞳。
 透けるような肌。
 金の糸のような肩まで伸びた髪が、その頬にかかってさらさらと落ちる。
「君、」
「はなして」
 目を奪われ、言葉を失っていたシンは少女に鋭くそう言われて漸く我に返った。
「ごめんっ」
「……きらい」
 少女は、それだけ呟いた。
 嫌悪するような瞳。蔑みに近い色を宿してシンを射抜く。
 意味も、理由もわからなかったが、シンの胸は急速に痛んだ。
「あ!」
 シンが次に意を決して声をあげた時には、少女は背を向けて駈け出してしまっていた。
「……あ……え、と……何してんだ、俺」
 頭をがしがし掻いて、シンは呻いた。
 一瞬にして憎むような、蔑むような、そんな眼差し。あの瞳にそぐわない色だった。
「おいおい、見てたぞ?」
「ヨウラン!」
「この、ラッキースケベ!!」
「なんのことだよ。おれはぶつかられたんだぞ」
「よく言うよ。見てたし」
 ヨウランがふざけてシンの背に回り込んでその様子を再現する。
 そう、今思い出してみれば自分の腕は彼女の胸に。支えて安堵していたその部分は、少女のふくよかな胸だった事を思い出す。
「……睨まれて当然、か」
 あれなら、頬をはたかれた方がまだましだ。なんて後味の悪い。
 去りゆく華奢な背を思い返して、シンは憂鬱になった。
「良かったな?式の前にオトコになれたって感じだぞ」
「いい加減にしろってば」
 得意げな悪友の顔にシンは嘆息すると、もう一度少女の去っていった方を知らずと眺めた。
 もう、そこは日常だ。
 シンの探し物は、どこにもなかった。

 

 

 

 迎えがくると指示された路地裏で三人は待機していた。隙間から見える街はお祭り雰囲気で盛り上がり、路地は人で溢れている為、
息を殺してじっと待つ。
「良かったじゃん。お前なんかでも痴漢してくれる奴がいてさ!」
 どうしてかアウルは小声で囁いた。とても楽しそうな様子だ。
「あれ。きらい」
 短くステラは言うと、頭から離れないあの瞳を忘れようと顔を振った。
「お前がぼうっとしてるからだろーが」
 アウルは馬鹿にしたように笑うと、ステラを一瞥して元通り待機の姿勢に戻った。
「……」
 押し黙ったままステラは俯いて嘆息する。
 ちょっと浮かれていたのだ。ショーウインドウに映る自分がまやっぱりいつもとは違って見えて、つい嬉しくて。側を歩く他の子達
と同じになれた気がしたのだ。
 それが、どうして。
「ステラ。今は任務だ、もう忘れろ」
 先頭で待機していたスティングが振り返って、俯いたままのステラに言った。
 彼の言うように、もうすぐここには迎えの車が来る。市民のふりをして乗り込んだこのアーモリーワンで、今から作戦が始まるのだ。
もうここに向かうまでにあったことなど気にしている暇は無い。
 ステラは頷くと、聞こえてきたエンジン音に視線を向けた。
 その瞳はもう少女のものではなく、戦士のものである。
「行くぞ」
 スティングの声にさらにテンションが高まる。
 そう、これから始まるのは実戦なのだ。検体同士の殺し合いではない。“本当の敵”と教わってきたものと漸く交えるのである。

 怖いものなんて、すべて消してしまえ。

 思い描くと気分が高揚した。
 同時に何故か脳裏を、あの赤い双眸が過ぎった。朱い色の瞳。真っ直ぐにステラを射抜くあの。

 消してしまえ。
 何度も唱えると、もうそれは見えなくなった。
 ステラは安堵の息を漏らして、車に乗り込んだ。

 

 

 

 


 乗り物、機械、兵器、モビルスーツ。
 呼び名はたくさんあった。頭に取り付けられた変な機械から大量の情報が流れ込んできたが、ステラにはどうでもいいことばかり
だった。羅列される文字は虫みたいにびっしっりとガラスに貼り付いているようで、気持ちが悪い。
 だが、この「学習」と呼ばれる時間が終わるころにはステラの意思とは関係なく、その虫たちは脳内に収まりしっかりと住み着く。
この繰り返しで頭の中は、知らない単語で溢れかえっていた。
 極たまに、ふとした瞬間にその意味を理解することがある。

 戦争、破壊、汚染、侵略、殲滅、略奪……それが“こわいこと”で、“なくさなきゃならないこと”であること。

 豆粒みたいな虫の中に、ぽつぽつと見えるこの単語にステラは怯えた。
 それを先生に言うと、いいことを教えてもらえた。

 それを消したかったら、戦うんだよ。
 そうすれば、もう君にはそんなもの見えなくなる。怖くなくなるんだ。


 そうなのか。
 
 戦えばこの不愉快な虫たちは出て行ってくれる。
 やらなくちゃ。やられる前に。

 握った拳が血に濡れているのに気づく。
 そうだ。
 やらなきゃ、やられる。

 この頭を巣食う虫たちを消し去らなくては、いつか私は消えてしまう。


 目覚めてから一時も「感じる」ことがなかったのに、ステラは初めて抱いた。
 そして抱き留められ、離してもらえなくなった。

 初めて出来た同居人は、恐怖という名の黒い闇だった。

 

 ステラは真っ直ぐに前を見据え、手にしたナイフを握りなおした。
 無駄のない動作で左右を確認する。
 ひとつ前のコンテナに隠れたアウルがライフルを構え、建物内を確認している。
(そう……消さなくちゃ……たたかう。そうすれば)
 付いた膝を音もなくスライドさせ、ステラは背をコンテナに預けた。両手に構えたナイフを脇に隠し、近づいてきた足音に身を屈める。
 視線だけ向かいのコンテナに隠れるスティングに送ると、ステラは素早くコンテナの影から身を現し、兵の腱を切りつける。
「…ぅああ!」
 悲鳴と共に血飛沫が舞い、それを合図にアウルが走りこみ倉庫のシャッターを下ろす。
「ステラ!」
 声に頷くと、ステラは倒れかけた兵の前に回り頚動脈に一線を描く。
 閉まりかけたシャッターに気づいた兵が数人慌てて身を捻りいれる。振り向きもせずに置くの格納庫に進むアウルを一瞥し、ステラは
ライフルを撃って応戦するスティングの背に付き、顎で促した。
「わかった。早くしろよ」
「わかってる」
 ステラは頷いて、同時にスティングの背を軸に反転し、迫った数人の兵の構えた銃口の前に立つ。
 スティングが走り出したのを聞いて、ステラは顎を引いた。
「……抵抗すッ」
 ステラが身をかがめ大きく跳ぶ瞬間、兵が銃口を一斉に向け引き金を引こうとしたが叶わない。
 青いスカートが宙を待って、花の香りをさせながら降りてゆく。兵達はゆっくりとそれを共に落ちながら眺める。気が付いた時にはス
テラと、彼らの頭部だったものが同時に着地する。
 頬についた血を手の甲で擦ると、先の格納庫から聞こえる銃声にステラは歩き出す。
「ば……け……もの」
 辛うじて首の飛ばなかった男が去りゆくステラの背に呻く。
 振り返ったステラは、見下ろした。
 ステラは気づかなかったが、彼女は笑顔だった。悦にいった満面の、笑顔だった。


 どががががががが!


 隔壁を破る銃声が響いて、めきめきと機械が擦れる音がする。
 ステラは走った。
 もう仲間はすでに3rdフェイズに移行しているはずだ。出遅れるわけにいかない。
「……」
 飛び出した格納庫には三機のクローラーに括り付けられ横たわったMSが見えた。
 ステラはスティングとアウルがコックピットへ駆け上がるのを目視して、自分も素早く手前の黒いMSに飛び乗った。教わった通りの
構造だ、いける。
 無駄のない作業でコックピットのハッチを解除し、ステラは中に身を滑らせた。
「……いける」
 コックピットシートにつき、操縦桿を確認し全ての機内を確認する。
<調子は?>
 OSを起動させ、スイッチをオンにすると真っ先に通信機からアウルの声が入ってきた。
「問題ない……」
 ステラは呟くと、頭上のスイッチをオンに換えてゆく。何もかも、言われたとおりだ。
 踊るように端末を走らせ、起動シークエンスに入る。
 G・U・N・D・A・M……、文字は浮かぶんだかと思うと眩い光を放って消え、同時に機体の主動力へと切り替わる。
 流れるようにコックピットに景色が広がり、眼の前が開けた。
<いくぞ!俺が格納庫を打ち抜く。先に出ろ!>
<あいあいさ>
 言ったアウルが機体を装着させていたクローラーごと起き上がらせるのが見える。
 ステラも表情を変えぬまま、操縦桿を押し上げるように動かした。機体はゆらりとした浮遊感と共に起き上がる。一気に視界が高くな
り、平行を保つ。
 起立したと同時にMSは排気し、命が吹き込まれたかのようにその双眸に緑の光を宿した。
「いろ……」
 ステラは感慨なく呟く。
 眼の前で二機のMSが色めいていく。鮮やかに装甲はモスグリーンとネイビーブルーに染まっていくのを見て、ステラは自分の搭乗す
る機体の腕を目の前に動かした。
 染まってゆく。
 漆黒に。じわじわと広がり、指の先まで真っ黒に染まると機体は轟くような動悸を起こしたようにステラは感じた。
<ステラ!>
 二機がすでに壊した格納庫から出て行くのを見て、ステラは息を呑む。
 ぼんやりしている場合ではない。
 目を伏せて、ステラは息を吸うと機体をその先へと駆った。
 そう、戦うのだ。
 全てを消し去る為に。

 

 

 

「なんだっていうんだ……」
 シンはカタパルトから移行しハッチ解除後、インパルスを動かしながら呆然とした。
 そこは今朝見たのとは全く違った光景だった。
 立派な工廠は今や焼け野原と化し、背後では銃声と爆音が鳴り響いていた。
「誰が……こんな!」
 こみ上げる憎い気持ちをシンは握った操縦桿に込めて機体を発進させる。
 始まる。
 なくそうと、こんな世界変えてやると誓ったあの日から。

 シンは赤い瞳に滾る怒りと憎しみを込めて、炎の中立ち揺らぐ三機のMSを見据えた。

 

 


 打ち付けた拳は、何度そうしてにも気が済まなかった。
 ステラは何度も、何度もコックピットで腕を叩き付けた。胸がざわめく。
 
 何故だ、何故!
 何故、消せない!!


 作戦は全て頭に入っている。
 もう時間切れなのもわかっていた。それでも退がれなかった。
「ぅああああ!!」
 何が何でも堕とす!
 ステラはどうやら陸戦に有利らしいMSの空中での機動性に苛つきながら、無我夢中で目の前の白い機体に殴りかかった。
「どうしてッ!こいつ……っ」
 消したい、消さなくてはならない。なのに、どうしてこの白い機体は悉く攻撃を避け、次いではこちらに打撃を加えてくるのだ。先
ほどからの激しく際どい攻撃に、ステラは息を呑むのも忘れて必死だった。
 嫌な汗が額から流れ落ちる。
 必死で操縦桿を動かしても思うように機体は反撃してくれない。
「ううう」
 スティングとアウルが通信で何か言っていたが聞こえなかった。
 頭上に空いた穴からは宇宙が見えた。そう、早くネオの元へ帰らなくちゃ。
 でも。
 ステラが顔を振って、再び攻撃しようとした瞬間に白い機体は猛スピードで反転しステラの背後に回っていた。
「ぃ、いやあああ」
 ステラは咄嗟にMSを可変させ、背後に飛び退った。
<ステラァ!置いてくぞ>
 怖い。
 どうしよう、怖い。
 虫がうじゃうじゃ頭を蠢いている。消えてしまう、黒の中に埋もれて消えてしまう!
「……や……」
 不意にステラの手が操縦桿から離れた。
 一瞬、目の前が青空でいっぱいになった。
「うみ」
 ステラは瞬間、何もかも忘れたように瞬く。
 青い。
 手に入れたかった、海。

 


 可笑しなパイロットだ、そう思いながらシンはインパルスを駆ってその黒い機体の背後に回った。
「……逃がしはしない!」
 手にしたビーム刃をシンは振り上げ、操縦桿を振り切った。
「何!?」
 その機体は「ガイア」といった。
 シンは3機のセカンドステージシリーズを噂では聞いていたし、楽しみにしていた。こんな形で、仲間となるはずだった機体と合い
まみえることになるなんて。
 そして、噂に違わぬ機動性だった。
「……舐めるんじゃないぞ」
 シンは食い縛った歯列から怒りで震える声を漏らし、その怒りを目の前でサーベルを掲げて応戦するガイアへぶつけた。
 ガイアは傾ぎ、揺らめくと一瞬止まったように宙を浮く。
「?」
 瞬いてシンは戸惑ったが通信機から聞こえるルナマリアの声に我に返った。
<シン!何してるの!!>
 絶好のチャンスだ。
 捕獲という難しいこの状況、何らかのトラブルか、幸い敵機は現在沈黙していた。
「よし」
 シンはガイアを捕獲するべく、ぐっと機体を寄せた。
 軋むような音がして、ガイアに接触する。その双眸は停止したように光を失っていた。
「コイツ……」
 インパルスがまさにガイアに触れた瞬間だった。
 シンは夢でも見ているのかと何度も瞬いた。一瞬にして広がった視界は白い砂浜と、青い海。

 なんだ?

 寄せては返す小波の音。
 雲ひとつない青空。
 まるでこの空のような。

 シンの頬をそっと掠めるものがあった。
 金色の、金の絹のような、掬えず手から摺り抜けていくような髪。

 君は、

 振り返ったその瞳は、赤紫の澄んだ……


<シン!!!!>
 引き裂くようなルナマリアの声がして、シンは息をした。
 激しく鳴る動悸に肩で息をしながら見上げると、目前のガイアの瞳にブンっと光が灯った。

 やられる。
 一瞬の閃光がシンの目の前を走った。

 

 

 

「ステラ!」
 スティングは必死に叫んだ。しかし一向に一番遅れているステラの機体からは返事がない。
「何やってんだ!」
 白い機体を相手にまだ交戦している様子が見える。もう脱出は目の前だというのに。
<スティング、あいつどうすんの?キレてるよ。多分>
 通信機からは隣を飛行するアウルの声が聞こえた。このままでは迎えに間に合わなくなってしまう。だが、今のままではステラは
あの機体を振り切れないだろう。
 焦りが走るが時間がなかった。
<置いていく?>
 おどけた様に言うアウルは無視してスティングは機体を反転させようとした。作戦は3機とも強奪することだ。ここでステラを見
捨てれば失敗したことになる。しかも捕まりでもしたら、とんだことになる。
<おいおい。それはまずいって。僕に任せなよ>
 置いていくとまで言ったくせに、アウルは演技したように心配そうに今度は言った。
 スティングは嫌な予感に眉間に皺を刻んだ。
 迷って下を見下ろすと、まさにステラの機体は白いMSに捕縛されんとしている瞬間だった。
<ステラァア!このまま、お前だけ死ぬかあ?>
 間一髪でするの叫んだそれは、まさしくステラにとっての「禁句」以外なにものでもなかった。
「ステラ!!」
 スティングは叫ぶと、機体を可変させ戻ろうとした。
 しかし、通信機からのステラの泣き声と共に猛スピードで黒い機体が宇宙へ逃げあがってスティングの横を過ぎた。
<結果、オーライってね>
 けけけと笑うとアウルも先に機体を駆って宙へと上がっていく。
 なんと勝手な同僚なんだ。
 アウルは怒りに満ちたオーラを放ちながら再び迫ってくる白い機体とザクから逃げるように自分も宙へと急いだ。

 

 


ついに書き始めました。

出会いから、今までを。これは絶対やばい。やばい一途を辿るぞ。

でも。書きます。

本編とは違うだろうぼくの視点なかり。。。妄想全開ですが、よかったら読んでやってください。

 

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